『スラムダンク』が私に与えてくれたもの

2022年12月22日木曜日

感想 雑記

  スラムダンクの映画『THE FIRST SLAM DUNK』を見にいって、いろいろと気づいたことがあります。

 それは、「小中学生の頃に摂取した作品がその後の人生に与える影響でかすぎ」ってことです。

 私にとってのスラムダンクは、そこまで大きな存在ではありませんでした。
 リアルタイムでは原作を読んでおらず、アニメのみ、しかも途中までの視聴だったため、アニメも原作もがっつり全部味わっている『幽遊白書』や『るろうに剣心』などとは違い、「学生時代にはまった作品」として名前を挙げようと思ったことがなかったのです。
 夫の蔵書にスラムダンク全巻があったので、大人になってから原作を読破してはいるのですが、映画を見たときはインターハイ以降の内容はぼんやりとしか覚えていませんでした。

(余談ですが、大人になってから読んだ漫画の内容の長期記憶への移行のしづらさは異常です。ダイの大冒険だって読んだ直後は「なんてすばらしい作品なんだ」と感動したのに、アニメが始まる頃には「なんかポップがとにかくすごかった」くらいしか残ってなかったんですから。)

 でも、スラムダンクのアニメはかなり好きで、毎回真剣に見ていました。漫画やアニメが好きではない母が「おもしろい」と言っていたくらいなので、ストーリーはもちろん、キャラクターもとても魅力的。劇的なバスケの試合展開、過去の掘り下げをともなう人間ドラマなど、惹きつけられる要素が満載でした。
 オープニングやエンディングも魅力的で、特にWANDSの「世界が終わるまでは…」は最高でした。今でもこの曲を聴くと土曜の夜のあの空気を思い出すほどです。アニメが終わるとき、クラスの男子たちが「なんで終わるんだよぉ~」と悲痛な面持ちで嘆いていたこともよく覚えています。

 スラムダンクが私に与えた影響として大きいのが、そのキャラクターたちです。

 私は流川も好きですが、一番の推しはミッチー(三井寿)です。当初出てきた際は「ロン毛・歯抜け・鼻血・自分からバスケ部にちょっかい出しに行っておいて水戸にボコボコにされる」などあまりいいところのなかった三井ですが、木暮の語る過去、安西先生と再会したときの名シーン、散髪・復帰後の活躍ぶりなど、小学生の私に強い印象を残してくれました。
 当時は上述のロン毛イメージから「三井が好き」とはっきり言うのはなんとなく恥ずかしいと感じており、表面上は流川ファンということにしていました。本当に申し訳ないです。三井ごめん。

 ここからようやく本題に入ります。
 映画を見て、三井への愛を思い出した私は、気づきました。

そうだ叶井ヒサシのヒサシは三井寿のヒサシであったのかもしれん」と。

 叶井ヒサシは、『サキヨミ!』に登場するキャラクターであり、美術部の副部長を務めています。部長のレイラの腕にあこがれて美術部に入部し、家では動物をたくさん飼っているという設定です。
 この「ヒサシ」の由来は、元々はGLAYのHISASHIからだと思っていたのですが、「好き」に忠実で自分独特の世界を持っている、くらいしか共通点がないので、ちょっと不思議には思っていたのです。
 三井と叶井の共通点は、「好き」という気持ちのどでかさ、面倒見がいいところ、コツコツ努力する真面目さなどかと思います。

 が、実は、もう一つあったんです。

 映画を見て、感動して、昔楽しくアニメを見ていたときのことをなつかしく思い出して、娘にも映画を見せたいと思って、数十年ぶりにアニメを見直しました。
 そして前述のエンディング「世界が終わるまでは…」を見て、気づいたのです。

 三井、猫ちゃんをダッコしてる。

 そうです。叶井の動物好きという設定は、ここから来ていたのです。これを見るまで、そのことに気づきませんでした。小学生のとき大好きだったエンディングの内容が記憶の奥底に沈んでいて、「ヒサシ」という名前を決めたときにいっしょに引っぱり出されたに違いありません。潜在意識怖すぎです。

 そしてもうひとつ、「そうか! 私はこれがやりたかったのか!」と気づいたことがあります。これは現在進行形の内容なのでここには記せないのですが、『サキヨミ!』の続きを書いていくうえで大きなヒントとなりました。
 正直、ここ最近はかなり迷いながら書いていたのです。その迷いがだいぶ解消された気がして、今のタイミングで映画スラムダンクに出会ったのは運命だったのかも、などと思ってしまいました。

 そういうわけで、リアルタイムでエヴァを見ていなかったことが果たしてどう出たのか、ちょっと気になっています。アニメが話題となっていた当時ドンピシャの中学生で、エヴァの洗礼を受けた同級生たちが信者のように変わっていく様をぬるい視線で眺めつつ、それでもやっぱり興味があった私は、アニメをすっ飛ばして劇場版を見るという愚行を犯し、それ以降すっかりエヴァとは距離を取ることになってしまいました。こちらも大人になってから漫画喫茶で当時出ていた最新刊まで読み、夫からビデオ()を借りてアニメをひととおり見て、「こんなに面白かったんか……見とけばよかったわ……」と後悔しつつ、新劇場版はきっちりすべて映画館で最終章まで見て満足しました。新海誠作品の随所にエヴァの影響が見られることから、(私よりだいぶ年上だけど)やはりエヴァの力は偉大だなあと思います。

 閑話休題。

 私の根っこには、スラムダンクが息づいていた
 これがわかったおかげで、なんだか強い味方がひとり増えたようで、かなり勇気づけられました。
 スラムダンクの魅力はたくさんありますが、その中でも特に、キャラクターは見事だと思います。ひとりひとりが個性的で、それぞれの関係性も魅力的。みんながそれぞれ信念や目的を持っていて、バスケを通してその生き様を見せてくれる。
 スラムダンクを知っている方はもちろん、知らない方も、ぜひ映画館へ足を運んで『THE FIRST SLAM DUNK』を見てみてください。きっと何か得るものがあると思います。ストーリーだけでなく、音楽も最高ですよ!

 ちなみに叶井ヒサシを構成する成分として、赤木をサポートする副キャプテンとしての木暮の存在も大きいことに気づきました。メガネはもちろん、周囲に振り回されがちだったり、あこがれの存在がいたり、部活を支える大きな屋台骨であるところなど、共通点がたくさんあると思います。
 あとアニメではたぶんカットされてるのですが、原作では木暮はいつも変なTシャツを着ています。三井の過去を話している間ずっと「うさぎ」のTシャツを着ているのがやたら印象的だったので、真面目そうに見えるのになんかちょっと変、という叶井の性質も、このへんの影響を受けたものなのかもしれません。

 そして、大人になってから気づく水戸洋平の魅力。優しくて強くて友達思いで器がでかくて最高ですね。映画版では小林親弘さんが声を担当していて、まさしくイメージぴったりだと思いました。あまりセリフがなかったのが残念。

 というわけで、今小中学生のみなさんは、今のうちにたくさんの作品を摂取してください。今見るのと、大人になってから見るのとじゃ、まったく違います。
 幸い今は、さまざまな配信サービスがありますし、昔よりもたくさんの作品にアクセスしやすくなっています。話題の作品だけでなく、興味があれば過去の名作にも手を伸ばしてみてほしいです。その第一歩として、まず『THE FIRST SLAM DUNK』を見ましょう。冬休みにぜひ見に行きましょう。バスケのことを知らなくても、興味なくても、絶対に楽しめます。あの映画は絶対に映画館で見たほうがいいです。
 映画を見て興味が出たら、アニメか漫画を見てみましょう。そしてともに三井寿を愛でましょう。一言で言ってしまえば、ただただバスケが大好きなだけのツンデレキャラです。ツンデレの走りです。長いブランクのせいで体力ないのが弱点ですが、グレてる間タバコを一本も吸わなかったかわいい人なんですよ。これもいつか復帰したい、またバスケをやりたいと思っていたからなんですよ。
 余裕があれば、叶井ヒサシのことも思い出してあげてください。三井と彼のそこはかとない共通点を感じてもらえたら、とてもうれしいです。

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