小説の書き方④ セリフの役割~よっつめのコツ

2024年11月9日土曜日

小説の書き方

 私が小説を書き始めたときによくやってしまっていたのが、

「なかなかストーリーが動き出さない」

「会話がだらだらと続いてしまう」

 ということでした。

 ストーリーが動く、というのは、ひとつめのコツである「!」や「?」が登場することです。

 何か不思議な事件が起こったり、びっくりするようなウワサを聞いたり、とつぜんの出会いから恋に落ちてしまったり……すべて「!」か「?」、もしくはその両方がありますね。

 というわけで、「ストーリーが動き出さない」と言う問題は、ひとつめのコツ「!」と「?」を意識すると解決できそうです。


 では、もうひとつの「会話がだらだらと続いてしまう」についてはどうでしょうか。

 私は、会話のシーンを書くことがとても好きでした。

 あまり考えずともポンポン言葉が出てきて、書いている自分でもびっくりするようなセリフが出てきたり、途中で漫才みたいになったりして、すごく楽しかったのです。

 でも、後で読み返してみると、これがとっても読みづらい。

 当然です。読む人のことを考えず、ただ書いている私が楽しんでいるだけだったのですから。

 大人になってからも、このだらだらセリフのクセはなかなか直りませんでした。

 だらだらをなくすためには一度書いたセリフをけずっていくことになるわけですが、そのときに意識したのが、「このセリフはどういう役割を持っているんだろう?」ということです。


セリフの役割

 セリフの役割は、だいたい以下の四つに分けられます。


情報を伝える

 主人公が知らないこと、そのストーリーを読むために必要な情報をしゃべってもらいます。

例)「こんど東京から転校生が来るらしいで」/「この屋敷では過去10年間に5人もの人が不可解な死をとげているんだ」など


キャラクターの描写

 そのキャラクターがどんな人なのかをセリフから感じ取ってもらいます。「おおざっぱ」「真面目」などと地の文(セリフ以外の文章)で説明するよりも伝わりやすいです。

例)「めんどくさいなぁ。でもこのままじゃ気になって寝れないじゃん」/「計算違いなんてあり得ません。私の導き出した答えは正しいに決まっています」など


キャラクターの関係性の描写

 二人のキャラクターがどんな関係なのかを感じ取ってもらうためのものです。

例)「あれ、傘持ってきてないの? 入ってく?」「い、いえ、大丈夫です!」/「まさか、まためんどうごと引き受けてきたんじゃないでしょうね」「そのまさかだ。おまえ、おれとの契約を忘れたわけじゃないよな?」など


ストーリーを進める

「!」や「?」に直接つながる、そのストーリーにとって重要な意味を持つセリフです。

例)「お母さまの形見のお人形が消えたわ! この屋敷にいるだれかが盗んだのよ!」/「この組織を抜けるつもりか? それなら、最後にもう一つだけしてもらいたいことがある」など


 ひとつのセリフにはひとつの役割、というわけではなく、「情報の提示とキャラクターの描写」「情報の提示をしながらストーリーを進める」というように、ひとつのセリフがいくつかの役割を同時に持つこともあります。


よっつめのコツ:セリフを書くときはそのセリフの「役割」を意識する!


説明セリフ

 今回はもうひとつ、セリフ関連でなやみやすいことについて書こうと思います。

 それは、「説明セリフ」についてです。

 説明セリフという言葉、みなさんは聞いたことがあるでしょうか。

 たとえば、こんな感じのセリフのことです。


例①「お姉ちゃん、私たち、三年前に両親が離婚してから、お母さんと三人でがんばってきたでしょ」

例②「あれが王宮の中心部にある尖塔さ。あの塔をぐるっと囲むように王宮が広がってる。あすこにクイーン・メイヴがいらっしゃるんだ。この国を治める女王だよ。王宮で働く妖精たちの数は三百を超えるね、とにかくでかい王宮さ。ナギサもあたいも、ここで働いてる。ちなみにクイーン・メイヴはエルフで、この国に住む妖精は、ほとんどがエルフとピクシーだ。王宮は国の北側に位置する」


 例①は、不自然な説明セリフです。

 妹から姉に向けられたセリフですが、「三年前に両親が離婚していること」も「お母さんと三人でがんばっている」ことも、あらためて妹から言われずとも姉は知っているはずです。書き手が読者に情報を伝えることを重視するあまり、不自然なセリフになってしまっています。

 このような場合はセリフを使わず、地の文で伝えたほうがいいでしょう。


 例②は、不必要な情報が多すぎる説明セリフです。働く妖精の数や妖精の種類、王宮の位置など、本当にストーリーに必要な情報なのでしょうか。

 書き始める前に細かいところまできちんと設定をした場合はこのように不必要なことまで書いてしまいがちですが、読者に知ってほしい情報、ストーリーに必要な情報だけにしぼる勇気を持ちましょう。

 ちなみにこの例②のセリフは、私がむかし書いた小説から引用しました(恥ずかしい……)。こうして見てみると本当にひどい説明セリフです。


 先に進む前に、ひとつ言っておきます。

「説明セリフはさけたほうがいいもの」という意味合いで語られることが多いようですが、決して「セリフで説明をしてはいけない」ということではありません

 上に書いた役割にも「情報を伝える」とあるように、セリフで説明をすることはどんな小説でも普通に行われていることです。

 小説を書き始めたばかりだと、例①や②のような「不自然」「不必要」な説明セリフを書いてしまいがちなのだと思います。

 では、どうすれば自然で過不足のない説明セリフを書くことができるのでしょうか。

 これには、いくつか方法があります。


方法1・説明しなければいけない状況を作る

例)「待ってください、それ以上入ると危険です!」「え、どうして?」「この森には、三つの言い伝えがあるんです。一つ目は……

 説明セリフに、説明以外の大事な意味をつけくわえるパターンです。この場合は「危険な行動を止める」という意味をくわえることで、説明セリフが自然なものになっています。


方法2:知りたがっている人に質問させる

例)「ねえねえ、さっきからあやしい動きしてるけど、あんたこの森のことなんか知ってるんじゃないの? 教えてよ」「……実はこの森には、三つの言い伝えがあるんです

 この場合、読者にもその情報を知りたいと思わせることが重要です。上のセリフの場合は「あやしい動き」をあらかじめ書いておくことで読者の頭の中に「?」を作り、説明セリフで「?」を解決させるという方法をとっています。


方法3:情報を小分けにする

例)「この森には、三つの言い伝えがあるんです」「え、三つも?」「はい。一つめは……というものです」「それだけでも相当ヤバいんだけど……あと二つは何なの?」「二つめは……、そして三つめは……です

 これが一番使いやすいかもしれません。説明を聞いているキャラクターの反応をはさむことでセリフを小分けにするというものです。くどい印象にしないため、二つめと三つめの説明を一つめよりも短くするのもポイントかなと思います。


 魅力的なセリフは、小説をパワーアップさせます。

 ぜひぜひ、いろんなセリフを書いて研究してみてくださいね!

プロフィール

七海まち(ななみ・まち)
小説を書いています。角川つばさ文庫より「サキヨミ!」シリーズ発売中です。

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