小説の書き方② 最後まで書くには?~ふたつめのコツ

2024年11月8日金曜日

小説の書き方

 このブログを読まれている読者さんの中には、すでに小説を書き始めている方もいるかもしれません。

 最初に「むずかしい!」と感じたことは、一体なんでしたか?

 文章を書くこと、キャラクターの名づけ、物語の進め方……さまざまなむずかしさがあると思います。

 私の場合は、「最後まで書けない」ことでした。

 設定やキャラクターを考えて書き出すところまではスムーズだったのですが、すぐに迷い始めます。どっちに進んだらいいんだろう?と。

 それは、「ゴールが決まっていないから」です。

 ゴールという着地点が定まらないかぎり、進む方向は決まりません。

 最後まで書くためには、ゴール……つまり「終わり」を決めておく必要があるのです。

 もちろん、終わりなど決めずに、自由に書いていく方法もあります。最初はとにかくたくさん書くことを大事にしてほしいので、終わらせようとせず、書きたいものを書きたいように書くというスタイルでいいと思います。

 でも、そんな方にも、ひとつ知っておいていただきたいことがあるのです。

 それは、「小説」というものの性質です。

 私は小説を、「変化を書くもの」だと考えています。

 みなさんの好きな小説をひとつ、本棚から持ってきてみてください。手元になければ、思い出してみてください。

 そうして、その小説の最初と最後を読んで(思い出して)みてください。

 どうでしょう?

 登場人物や舞台は同じでも、何かが変わっていませんか?


「ぼくらの七日間戦争」、「かがみの孤城」、「ハリーポッターと賢者の石」などなど……どれも、最初と最後は大きく変わっていますよね。

 これは、その小説の中で「変化」が起こったからです。


「最後まで書けない」ということになやんでいる方がいたら、ぜひこの「変化」を意識してみてほしいのです。

 変化するのは主人公の場合が多いですが、主人公以外の登場人物でも、人間関係でも、環境でも、なんでもよいです。最初と最後で、何かを変えてみましょう。


「初心者だった主人公が何かに打ち込んで最後に優勝する」

「片思いだったが両思いになる」

「ぎくしゃくしていた友達と仲直りする」

「ひどい環境で飼われていた犬を救い出す」……


 こんな感じで、「変化」を意識するととたんにストーリーの骨子になりそうなアイディアが次々と浮かんできます。


 この「変化」を作るには、ひとつコツがあります。

 それは「最初を欠けた状態にする」ということです。

 上の例でも、「初心者(まだ優勝するまでのスキルは得ていない)」「片思い(恋人同士にはなっていない)」「ぎくしゃく(友達と関係を結べていない)」「ひどい環境(健康的に暮らせていない)」といった具合に、最初がすべて「欠けた状態」になっています。

では、「欠けた状態」を先に考え、その後に変化について考えてみましょう。


「欲しいものがあるけどまだ手に入っていない」

「やりたいことがあるけど家の事情であきらめている」

「仲良くなりたいけど勇気がなくて声をかけられない」


 どうでしょう。すべて「欠けた状態」になっていますよね。

 これを先に決めてしまえば、どこをゴールにすればいいのかがおのずと定まってきます。


「欲しいものがあるけどまだ手に入っていない」欲しいものをなんとかして手に入れる

「やりたいことがあるけど家の事情であきらめている」やりたいことに打ち込めるよう、家の問題を解決する

「仲良くなりたいけど勇気がなくて声をかけられない」仲良くなるためにどうしたらいいかあれこれと考えて成功させる


 最初の状態を欠けさせることで「その小説で解決する課題」を作ることができます。そうすると、ゴールに向かう道筋がだんだんと見えてくるのです。

 最初に欠けていた部分は、最後では補われることがほとんどです。最初に欲しかったもので補われる場合もあれば、最初の場面では思いもしなかった別のもので補われることもあります。


ふたつめのコツ:「変化」を意識しよう!

最初は何かが「欠けた」状態にして、最後はそこを「補う」状態にしよう!

プロフィール

七海まち(ななみ・まち)
小説を書いています。角川つばさ文庫より「サキヨミ!」シリーズ発売中です。

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