小説の書き方①の補足 ストレスになる「?」

2024年11月11日月曜日

小説の書き方

  ひとつめのコツの記事で書いた”ストレスになる「?」”について書いていきたいと思います。


答えのない「?」

 たとえば、新しいキャラクターの登場シーンで、そのキャラクターが「腕に包帯を巻いていた」という文章を書いたとします。

 包帯について何も説明がないと、読者さんは「どうして包帯を巻いているんだろう。ケガをしているのかな」「ファッションで巻いているだけかも」などと考えると思います。

 そして、そのうち答えが出てくるんだろうと思いながら読み進めます。

 ところが、最後まで読んでも包帯についての説明は何もありませんでした。

 このとき、何が起こるでしょう。

 そうです。読者さんの頭の中の「?」は、解決されないままもやもやと残ってしまうのです。

 せっかくおもしろい話だったとしても、「あれって結局何だったの?」という「?」がもやもやと残ってしまったら、「おもしろかった!」という気持ちもちょっと冷めてしまうかもしれません。これは、すごくもったいないことです。

 キャラクターの見た目にこだわったり、ちょっと変わったアイテムを持たせたり、それ自体はまったく悪いことではありません。

 深読みされてしまいそうな、意味ありげな描写をさけましょう、ということです。

 この例で言うと、キャラクターが登場してすぐ、あるいはそれほど時間が経過しないうちに、包帯を巻いている理由を明らかにしましょう。

 本人の口から「毎朝早起きして家で巻いてきてるんだ(ファッションの場合)」と言わせたり、「あいつ、こないだ体育で転んで腕をケガしたらしいよ(ケガの場合)」というウワサを聞いたりすることで、不要な「?」を生むのをさけることができるでしょう。


「?」を引っぱりすぎる

 たとえば、友人とぎくしゃくしている主人公がいるとします。それを「去年の夏のできごとのせい」と書いたとします。

 その後もことあるごとに「去年の夏のあのことがなければ」とか「去年の夏以降、ずっと気持ちが暗いままだ」とか、「去年の夏のできごと」が明かされないまま「去年の夏」というワードだけが何度も出てきたら、どうでしょう。

「いいかげん、『去年の夏』に何があったのか教えてよ!」という気持ちになりますよね。

「?」はすぐに明かさず引っぱることで読者さんの興味を引くことはできるのですが、もったいぶるのにも程度があります。あまりに引っぱりすぎると大きなストレスになり、最後まで読むときのノイズになってしまいます。

 ただ、こうした大きめの「?」はストーリーの大事な要素になることが多いので、一概に「すぐに明かしてしまいましょう」と言えないのがもどかしいところです。

 これはひとつの案ですが、「すぐに明かしたくない!」というときは、情報を少しずつ小出しにしていくのはどうでしょうか。パズルのピースを少しずつはめていって、最後に一気に完成までうめるようなイメージです。

 部分的にでも情報が明かされることで、読者さんが空白部分を想像しやすくなり、答え合わせをする楽しみが生まれるのではないかと思います。


「え、え、なんで?」の「?」

 読んでいて不自然さを感じる「?」のことです。

 たとえば、こんな感じです。

  • 聞かれてはまずい会話をする場所が、生徒たちでにぎやかな学校の廊下
  • 「毎日塾と習い事でいそがしい」という設定のキャラクターがいつも家にいる
  • 三十分かけて自転車通学をしている友人の家に電話をかけて学校に呼び出すと五分ほどで到着した(ワープ?)
  • 初心者なのにすぐに重要な役をまかされる、あっというまにプロ級の腕前になるなど

 聞かれてはまずい話は、人のいない場所でするのが自然です。他にもキャラクターのセリフや設定とその後の行動がかみ合わなかったり、「さすがにそれは都合がよすぎるんじゃ?」「こんなこと普通はありえない!」と感じてしまうような展開は、どれも納得できる理由が描かれないかぎり、「?」のまま最後まで残ってしまいます。

 もちろん、「!」に変えるつもりで書いているのであれば、まったく問題はありません。

「毎日塾と習い事でいそがしい」というのは本人のついていたウソで、そのウラにはこういう事情があった、とか。

 初心者なのにプロ級の腕前になったのは、関係なさそうな他のスキルがすごく役に立っていたからだった、とか。

 こうした場合、上にあげた例はむしろ読者の心に引っかかるよい「?」になります。

 ただ、この場合は「何か意味がありそうだぞ」と思わせる描写(キャラクターが目をそらす、ごまかそうとするなど)を入れたり、まわりの人につっこませたり、「これは意味のある『?』だぞ!」というサインを書き足すことが大事だと思います。

プロフィール

七海まち(ななみ・まち)
小説を書いています。角川つばさ文庫より「サキヨミ!」シリーズ発売中です。

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