さっそくご質問をありがとうございます!
サキヨミ!をおもしろいと言っていただけてうれしいです。児童文庫、とても楽しい世界なので、ぜひぜひ挑戦していただけたらなと思います!
そして、最終選考に残られたなんてすばらしいです。それだけの実力がおありならデビューは本当に間近だと思います。
ご質問の「起伏が乏しい」「盛り上がりに欠ける」は、私も担当さんに何度も言われたことがあり、悩んできた部分です。
応募作を実際に拝見していないので的外れな答えになってしまうかもしれませんが、今の私にわかるかぎりのことを書いてみたいと思います。
「盛り上がり」という言葉をまず解釈してみましょう。
これには下の二つの意味があるんじゃないかと私は考えました。
A.ストーリーを外から眺めたときの盛り上がり、つまり「ストーリーの中で起こるできごとの規模」に関するもの。
B.ストーリーを読んだ読者の感情の盛り上がり。
このAとBはそれぞれ独立しているのではなく、表裏一体のものです。大事なのは、この二つをセットで考えていくことだと思います。
以下、①から⑤はAを出発点に、⑥はBを出発点にした方法です。
①ストーリーの「底」を深くする
藤子F不二雄先生の言葉に「マイナスとプラスの落差が大きいほどおもしろい」というものがあります。
クライマックスがプラスの頂点とするなら、その反対のマイナス部分に注目し、落差を大きくしてみるというのはどうでしょうか。
ストーリーが進んでいくごとに、読者さんの中には「こうなってほしい」という思いが出てくることと思います。その「こうなってほしい」を読者さんの予想を超えて実現させるのが「おもしろいクライマックス」の条件かなと私は考えています。
「底」の部分では、その「こうなってほしい」への道が完全に閉ざされた(と思われる)状態を描いてみるといいと思います。
②危機や代償を大きくする
上記「底」とも関連するのですが、「このままでは(あるいは失敗すると)大変なことになってしまう」の「大変」の度合いをとにかく大きなものにします。
よくあるのは「世界の崩壊」や「死」ですが、大事なのは「主人公が絶対にそうなってほしくないと強く望んでいること」にすることです。
③制約を作る
主人公の行動に時間的、空間的な制約を設けることで切迫度(読者さんのハラハラ)が増します。
「トイストーリー」ではアンディの引っ越しが近づいていることが時間的制約にあたりますね。ウッディたちがおもちゃであること自体が大きな制約でもあります。
④主人公をジレンマに追い込む
たとえば「幼なじみを助けると恋人が死んでしまう」というような板挟みの状況は特大の「!」と「?」になります。
⑤意外性に頼る
これはちょっと小手先感があるのですが……
クライマックスに予想外の要素を入れてみるのもいいかもしれません。
- 定石とは逆の方法を用いる
- 意外な真実の発覚で葛藤がさらに大きくなる
- 相手の意外な行動(拒絶されて当然のところに愛を与えられるなど)
- 小さな見落としや抜け道などが解決のヒントになる
- 重要視されていなかった人やアイテムが役立つ
- 向き合っているメインの問題ではなく、別の問題を解決することでメインの問題も解決する
- トラブルなどの悪いことが逆に打開のヒントとなる
- まったく関係のない別分野の知識や技術が思いがけず役に立つ
- 当たり前の存在だった仲間やアイテムについての意外な新事実
などなど。
⑥主人公の「秘められた思い」を出す
主人公が過去に押し込めた思い、気づいていなかった本当の願いなど、「主人公がそれまで表に出さなかった思い」をクライマックスで爆発させることで読者の感情を大きく揺さぶることができます。
私自身はこれが一番大事かなと思っています。ストーリーは、外からやってきたできごとだけで成り立っているもののではなく、その大部分が主人公の考えや行動によって進んでいくものです。主人公の目的や葛藤、課題をしっかりと設定し、そこにそぐう形での着地点および障害を模索することも有効かもしれません。
以上、少しでもご参考になれば幸いです。