ドラえもん映画について

2023年3月29日水曜日

感想

 今回はサヤさんにリクエストされた「ドラえもん映画について」の記事を書いていきたいと思います。

 まずは最新作「ドラえもん のび太の空の理想郷」のネタバレ感想です。

 ネタバレを含みますので、まだ見ていない方はご注意ください!


あらすじ

 過去の新聞記事の目撃情報を頼りに、タイムツェッペリン(タイムトラベル機能つき飛行船)で「ユートピア」捜しをするのび太たち。やがて「パラダピア」なる三日月形の島を発見する。そこは誰もが「パーフェクト」になれる夢の楽園だった。


ディストピア下の二つの友情

 パラダピアの住人であるネコ型ロボットのソーニャが使う「悪者」という言葉の違和感や「パーフェクト」という言葉に見え隠れする不穏さから、すぐに「ユートピア……?」と首をかしげたくなります。

 案の定、パラダピアは「争いのない平和な世界」を実現するために作られたディストピアでした。パラダピアンライトと呼ばれる光線を浴びるごとに、心を無くしていく=洗脳されていく住人たち。ジャイアンやスネ夫、しずかちゃんも、「分け合う」ことや「励まし合う」ことを尊ぶ平和思想へと洗脳されていき、三賢人の言うところである「パーフェクト」に近づいていきます。

 いっぽう、ひとりだけ洗脳されない=パーフェクトになれないことに悩んでいたのび太。そんな彼も、より強力な光線「ネオ・パラダピアンライト」によってついに洗脳されてしまいます。が、三賢人に命令されても、ドラえもんを撃つことができません。その後ソーニャによってドラえもんが虫に変えられると、途端に洗脳が解け、のび太は博士に反論をします。ドラえもんはダメロボットじゃない、僕の友達だ、と。

 これは、洗脳されたのび太に対するドラえもんの呼びかけと対になっています。ドラえもんものび太も、ありのままの互いを愛しているのです。ここは泣けたなあ……。

 今作はいつもの五人がいっしょに行動する場面が少ないかわりに、「のび太とドラえもん」、「ドラえもんとソーニャ」という二つの友情を描いていました。

 旧ドラ(のぶドラ)はのび太の保護者的立ち位置で慈愛を持ってそばにいる感じでしたが、新ドラ(わさドラ)はより距離が近い友人的立ち位置で、旧ドラよりものび太とドラえもんの友情にフォーカスしている印象があります。

「のび太&ドラえもん」だけでなく、「ドラえもん&ソーニャ」というネコ型ロボット同士の友情もよかったです。ドラえもんとの交流を通して、ソーニャは「自分の心に従うこと」の大切さに気づいていくのです。ゲストキャラクターとドラえもんの友情が描かれるのは珍しいですよね。


「パーフェクト」の意味

 この映画で早くから登場する「パーフェクト」という言葉の怪しさや空虚さったらないです。ギリシャ神話の神っぽい見た目の三賢人も、同じくらい怪しい。

 そもそも、のび太の目指す「パーフェクト(能力面)」と、三賢人の正体たるレイ博士が理想とする「パーフェクト(思想面)」は、初めから食い違っていました。

 のび太の目指すパーフェクトとは、自分の中にある可能性のことを指しています。それは、自分の意志で到達できるかもしれないからこそ意味があるものです。

 博士のパーフェクトはその真逆、人の意志を奪うことでしか実現できないものでした。

 ここから、「正しさや理想の押しつけは人の心を奪ってしまう」というメッセージを読み取ることができます。


「のび太と鉄人兵団」との関連

 争いのない平和な世界(ユートピア)を作りたい、というレイ博士の思いは、「のび太と鉄人兵団」のメカトピアを作った博士と同じです。レイ博士の見た目がなんとなく鉄人兵団の博士と似ていたことも含め、おそらく本作は「鉄人兵団」を意識して書かれたものなんじゃないかと思います。

 「鉄人兵団」では博士がロボットを改造して「温かい心」を植え付けようとしますが、これも「心」がテーマとなっている本作に通じています。ラストのソーニャの運命も、リルルの転生を思い起こさせるものがあります。

 私はドラえもん映画の中でも「のび太と鉄人兵団」が大好きなので、別の機会にこちらについても書けたらいいなあと思っています。


最後に

 よい映画でした。新ドラのオリジナル映画の中でもかなり好きな作品です。ドラえもん映画を全部見ている娘も高評価でした。

 欲を言えば、ソーニャや博士の過去をもう少し掘り下げてくれるとうれしかったなあ。特に博士は、のび太と通じる部分があるんじゃないかと思うので。

 また、ドラえもん映画はのび太たち五人がどう活躍するのかが見所だと個人的に思っているので、途中でジャイアンたちが洗脳されて(一時的にですが)のび太のパーティから離脱してしまうのがちょっと残念でした。けど、そのぶん洗脳が解けたときの頼もしさったらなかったですね。


 他のドラえもん映画についても書こうと思ったのですが、長くなってしまったので今回はここまでにします。

 サヤさん、ネタのご提供をありがとうございました!

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